厳冬期の女峰山にて水攻めの刑

山の神は一般に女性であるとされている。
しかも醜女であることから、自分より美しい女性を忌み嫌う。
この物語は、そんな山に初老の男性1名(M氏)と中年女性2人(AK&MK)で訪れた際の出来事である。
日光表連山の名峰・女峰山(2483m)は、古来より山岳信仰の場として知られてきた。
ここに祭られているのは大国主命の妃、田心姫命だ。
彼女に出会うべく、先日の3連休に女峰山登山を企画した。
この3連休、当初の予定は1日目川場のゲレンデスキー、2日目と3日で女峰山登山であった。
1日目の早朝、都内を出発する車の中で天候を吟味した結果、1日目と2日目で女峰山登山、3日目ゲレンデスキーに変更。急遽、日光に進路を変更した。
出発前から乗り気でないM氏。
たまたま見ていたヤフー占いによると、この日のM氏の占いは最悪で「思いがけない予定変更にあたふた」であった。ヤフー占い、バカにできない。
今回は、「女峰の馬鹿尾根」といわれる二荒山神社から黒岩の頭を経由するルートを選んだ。

1日目は唐沢避難小屋(2250m)までとし、2日目に山頂を踏み、下山を予定。
二荒山神社から少し入った滝尾神社に車を止め、8:00入山。

今年は例年にない暖冬で、標高1500までは雪の気配もなかった。
標高を上げると、徐々に積雪量が増えてきたが、前週の降雪の後に1名入ったようでトレースがあり、迷うこともなく進む。
快晴とはいえないがまあまあの天気で無風。
眼下に広がる日光市街や日光連山の山々を楽しみながら久々の山歩きに浮かれていた。
標高2050m地点で前週に入っていた1名のトレースが消えたが、ひざ下くらいのラッセルで時間的にも余裕があり、問題なく進む。
しかし斜度が上がり、もなか雪状態で思った以上にペースが上がらない。
ルートを見失い、藪漕ぎ地獄に陥り、それまでの余裕が一変、焦りに変わる。

標高2200mの箱石金剛までたどり着き、先は見えてきたとばかりに小休止。
しかし、ここからが長かった。
歩けども歩けども進まず、そのうち日没を迎え、ヘッデンでのラッセルに。
避難小屋に着いた時、時刻は18:00を回っていた。
寒さで震えが止まらないM氏。
ゲーターを持っているにもかかわらず、もうすぐ避難小屋だからと着用せずに深雪の中を歩き続け、靴の中に雪が入り靴下はびしょ濡れ。
替えの靴下を持っておらず、必死で乾かす羽目に。
すぐに水を作って暖かい食事をとり、
プラティパスに熱々のお湯を入れ、湯たんぽを作る。
しかし、後でこの湯たんぽがとんでもないことに。
前夜の睡眠不足もあって宴会も早々に切り上げて就寝。
広々とした避難小屋にそれぞれ陣取り、21:00にはシュラフに潜り込んだ。
2時間ほど経過した頃、M氏がガサゴソし始めた。
避難小屋の外に出たり入ったり。
気になったが眠いので声をかけず寝たふりを決め込む。
朝になり確認したところ、
この時M氏はびしょ濡れのシュラフと戦っていたようだ。
足元に置いた湯たんぽの蓋の締めがあまかったようで、シュラフの中が水浸しになったとのこと。
避難小屋に設置されていた掛け布団でなんとか一夜を過ごしたという。
翌朝は山頂を踏むことは諦め早々に下山したことはいうまでもない。
どうやら田心姫命はM氏がタイプではなかったようだ。

タイトルとURLをコピーしました