2024年3月3日
メンバー (L)Y.W M.M (記)Y.T
【行程】
07:30 岩小屋〜08:00 グラスホッパー取付〜08:45 1P終了点〜09:15 2P終了点〜09:45 3P終了点・氷瀑の登攀開始〜11:00 4P終了点〜12:30 5P終了点到達〜13:20 フォローの登攀完了・懸垂下降開始〜15:20 懸垂終了〜17:00 新穂高駐車場
【記録】
冬型の気圧配置で冷え込む朝、遅めの出発で岩小屋からグラスホッパー取り付きへ向かう。
前日に3ルンゼに取り付いており壁の状態はかなり悪かったのだが、グラスホッパーの偵察をしたところ下までつながっていそうだったため登ることとした。偵察時につけたラッセル跡は夜の降雪で半分埋まってしまっていた。
爆速で突き進むWさんに追いつこうと必死にもがくが、M氏も自分もまったくついていけずWさんに遅れること約5分、汗だくで取り付きに到着。軽く補給して装備を整える。
1P目、Tのリード。大岩を右から登り、続く雪面を登る。柱状に固まった氷にスリングをかけて一箇所だけランナーを取り、灌木で終了点とする。灌木には真新しい残置スリングが2-3個つけてあった。今シーズンはたくさんのパーティが取り付いたのかもしれない。
[取り付き]
2P目、M氏のリード。1P目と同様、氷が少しだけあり、雪が大半を占めるピッチだった。ロープは淀み無く流れていったが、最後に支点となるものが無く終了点の構築に苦戦していた様子。結局固めた雪のような氷にスクリューを2本打ち込んで終了点としていた。
3P目はWさんがリード。トポによるとベルグラのついたスラブに取り付く、となっているが、氷はほぼ無く岩の上に薄い雪が乗っているだけであった。2P目の終了点が貧弱であり、またランナーも取れていないことから見ていても緊張するピッチだった。少し傾斜が緩む左壁へ移り込んで超える。
4P目、氷瀑の登攀が始まる。リードはWさん。下部では少しの衝撃で崩れてしまう脆いツララに慎重にアックスとアイゼンを決めながら登っていく。3,4本ほどスクリューを打ち込みツララ地帯を超えると、薄い氷が張った中段部へと進む。傾斜は緩くはなっているが、氷の下にすぐ岩があるようで、アックスを振るたびにカンカンと岩を打つ音が響く。スクリューも打てない中、時折アックスを打ち込んだ氷が崩壊しビレイ地点まで降り注いでくる。このピッチは精神的にかなり辛かったのではないかと思うが、じわじわと高度を上げていくWさんは流石である。ビレイするM氏と二人、落氷ラインを避けつつ小さく縮こまってハラハラと見守っていた。取り付く前は氷瀑を登り切るという話をしていたが、想定よりもスクリューをたくさん使っていたため途中でPを切ることとなった。スクリューで支点を作ったうえでアックスにテンションをかけているようだ。
[氷瀑の登攀]
いよいよフォローの登攀である。脆い氷を割りすぎないよう、小さな窪みに少しだけアックスを打ち込み引っ掛けながら登る。今シーズンはアックスを打ち込む練習をしてきたので、慣れない動きにヒヤヒヤする。途中、アックスの上の方を掴んで体を引き上げてしまい、顔面の前にアックスがきた瞬間に氷からすっぽ抜けて唇を強打してしまった。ドラツーのジムで「それやると頭割るよ!」と注意された記憶が瞬時に蘇る。ジムでの教訓を活かせず反省。
なんとか登りきりセルフを取って、サードで登るM氏を見守る。自分と同様、ガラガラと氷を崩す音を響かせながら登ってくる。M氏も顔面に氷を受けたようで、支点に辿り着いたときには口の中と顎が何箇所も切れて流血していた。血濡れの笑顔がちょっと怖い。
[赤い笑顔]
5P目はTのリード。高い上に顔面を割ったこともありメンタルはダメージを受けていたが、ここから上は氷がしっかりと発達しているためアックスも打ち込めるしスクリューも効かせられるはず。それに距離もかなり短そうだ。練習通りにやれば大丈夫と、気を引き締め直して取り付く。
遥か下にビレイしていた雪面が見える。絶対に落ちたくないのでアックスを思い切り振る。一発では決まらず、何度も振りかぶる。練習時に「遠心力で打つんだよ」と教えてくれたWさんの言葉を頭の隅で思い出しながらも、体は強張り腕力頼りとなってしまう。結果、スクリューを一本決めて1.5mほどしか進んでいないのにアックステンションをかけることとなった。その姿勢のままスクリューをもう一本打つ。あと2手ほどでテラスの様になっている部分へ乗り込めそうである。パンプした上腕をしっかり休め、力任せに登り切った。
氷瀑を超えると雪のテラス状となっており、その先にまた氷があった。おそらくこれが5P目の青氷と記載されているところだ。トポでは中央を登ると書いてあるが、左の凹角状が登りやすそうだったためそちらから取り付く。
氷と岩のチムニーのような地形となっていて、氷へアックスを打ち込みながらワイドクラックのように体を突っ張って登っていく。凹角を詰めあがると雪田となった。左手に残置のある立ち木が覗いており、そこを終了点とした。
[終了点]
スイスイ登ってくるWさん、M氏を終了点へ迎えて記念撮影し、懸垂の準備に入る。ここから五本の懸垂となった。探せば随所に支点や残置はあるが、そのまま使うとロープ回収時に流れが悪くなりそうであった。また、けっこう良い時間にもなってきていたので、二箇所でスリングを残置して確実に降った。懸垂が終了し、取り付きに戻った頃には吹雪となっていた。
[吹雪]
テン場へ戻り急いで撤収し新穂高へと向かう。このところ敗退が続いていたが、シーズン最後にリードも交えて完登することができ、とても充実した山行となった。
[グラスホッパー]