2023年7月29~30日 YW、YT(記)、他1〈行程〉
1日目 6:30 川古温泉~8:30 入渓点~8:51 マワット下ノセン ~ 11:43 裏越ノセン ~ 14:55ドウドウセン ~ 19:00 ドウドウセン上にて幕営
2日目 7:00 ドウドウセン上~ 10:30 オジカ沢の頭~ 12:20 万太郎山~ 13:00毛渡乗越~16:00 川古温泉
〈記録〉
国境稜線の北側の天気が悪く、南側の天気が良かったため転進プランとして決まった赤谷川本谷。元々の計画が少し気楽な万太郎本谷だったこともあるのだが、赤谷川本谷に決まってから当日まで実はちょっと緊張していた。
スタート地点である川古温泉から、ヒルの出る林道を2時間歩いて入渓点へ。沢装備へ換装していると靴下の上にヒルがくっついているのを見つけてしまった。ヒルだけは本当に勘弁してほしい。一人騒いで、少しばかり緊張を誤魔化す。
歩き出してからほどなくしてマワット下ノセンが現れた。左右どちらからも登れそうだが、朝一で取りつくには少し悪そうだ。内心、フォローが良いかな…などと少し弱気になっていたら、リード行く? と聞かれてしまった。
「リードですか? やります」と平常心を装いながら取り付く。そんなに難しく無いが、謎のプレッシャーのせいか動きが鈍い。支点確保のため腰に手を伸ばす。カラビナを開いた瞬間、なんとハーケンを一本落としてしまった。暗い谷底へと吸い込まれていくアングルハーケン。カモシカで買ったばっかりなのに…。
赤谷川本谷は大きな沢だった。マワット下ノセンに始まり、マワットノセン、裏越ノセン、前衛滝、そしてドウドウセンと、名前のついた滝がいくつもかかっている。
続くマワットノセンは、釜が深そうなこともありロープを出さずフリーで越えた。この頃には最初の緊張など忘れ、明るく綺麗な赤谷川本谷をすっかり楽しめていた。その後しばらく巨岩帯を歩くことになるが、これも中々面白かった。岩を登ったり降りたりするだけの体力勝負ではなく、しっかりとルーファイする必要がある。ショルダーやお助け紐を駆使して進む。巨岩帯の先で沢が少し開けた。切り立った崖に大量の燕の巣がある様で、これまた大量の燕が谷中を飛び回っていた。ここで一休みして水に浸かる。火照った体に谷川の水が気持ち良い。
燕の谷のすぐ先に裏越ノセンがあるが、ここは他パーティが取りついており時間がかかりそうなので巻いて抜く。しばらく歩くと前衛滝が現れる。ドウドウセンの直前にまさに門番のように佇んでいて、この滝の奥に何があるのか、と期待が高まる。
いよいよドウドウセンに取り付く。先ほど抜いたパーティに前衛滝で抜き返されていたので、前のパーティを待ちながらの登攀となる。渡邊さんリード、自分はビレイ。2P目で核心をアブミで超え、少し安定したところまで登っていくともう見えなくなってしまった。その後しばらく待つが、様子がおかしい。どうやら先行パーティが詰まっているようで、全く動きがない。ビレイ地点では滝の飛沫が雨のように降り注いでいる。凍えながら待つ。あまりにも寒いので同行していたYCCのNさんの陰にそっと隠れる。よし、これなら何とか耐えられそうだ。
先行パーティが抜けた頃には結構な時間が経っており、ドウドウセンは巻くことに決定。左岸を大きく迂回する。途中、ドウドウセンがよく見える地点があり、登攀中の別パーティの姿も確認した。滝を大きく巻くような登りを繰り返しており、かなり大変そうだった。
高巻きが終わった場所にて幕営。程よく砂が敷かれた河原で寝心地が良さそうだ。丁度、もう一つのパーティも抜けてくる。渡邊さんと元からの知り合いだったこともあり、皆で焚火を囲む。酒とつまみを持ち寄って、登ってきた沢の話をしながら宴会。良い夜だった。
翌日、このパーティは本谷ではなく別の沢へ行くとのことで、出合まで同行した。昨日とは打って変わって穏やかな渓相だ。一度だけ悪い草付きをトラバースする滝があったがなんとか通過。源頭部に近づくと山肌には笹が生い茂り、草原みたいで癒される。本流を詰めてオジカ沢の頭へ出た。二日目はとても気持ちの良い行程だった…と、終えてしまいたいが、ここから川古温泉まで戻らないといけない。オジカ沢の頭から万太郎山を超えて毛渡乗越から入渓点へと下り、ヒルが出現する林道を2時間歩かないといけない。気が滅入るが、中々来る機会がないだろう稜線をどうにか楽しんで下ってやろう、と意気込んで歩き出す。もちろんすごくしんどかったが、今となっては良い思い出だ。
赤谷川本谷はとても大きな沢だった。スギローに入る前の自分では想像もできなかった大きさだ。今回お誘いいただいた渡邊さん、そして繋いでくださったスギローの皆様に感謝です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。