●2020年3月21日(山波437)
まだ暗い内から、そそくさと宿を出る6名。前日に瀧水寺大日坊を訪問し、日本で唯一の即身仏に「雲払い」をお願いしたおかげか、この日は午後から雲がなくなり晴れるとの予報。その予報のせいか、中島台の駐車場には、5:30の時点ですでに車がずらりと並んでいる。どうやら、考えることはみんな同じらしい。我々も期待に胸を弾ませ、シールをつけて中島台を出発した。
獅子ケ鼻湿原はスキーを担ぐパーティもいたが、我々は雪を選びながらスキーで進む。この湿原は、異形化した太いブナが多い。途中、樹齢約300年の森のシンボル「あがりこ大王」に「行ってきます!」とあいさつをして、千蛇谷を目指した。
やせ尾根を慎重に越えると、そこには広大な雪原が広がっていた。北アルプスとも違う雄大さ。薄曇りの空の中に、鳥海山の山頂が見える。曇っていても、稜線がしっかり見えるので、やはりこの後の天気は期待できる。しかし、この8:00の時点で日差しはない。凍っている箇所もあるので、念のためクトーを装着して登ることにした。初めて使うクトー。うわさでは聞いていたが、ヒールリフターを2段階にすると、笑えるぐらい全然効かない。潔く、上げても1段階までにして登ることにした。
千蛇谷はあまりにも広いので、各々好きなラインで登っていく。振り返ると、下の街が見える。天気予報では日が出るのは12:00からだったが14:00に変わっており、このまま登ると、カリカリを滑ることになってしまうとのこと。それは、嫌だ。そこで、長めに休憩をとり、のんびりと登ることにした。登っても、登っても鳥海山は近づく気配がなく、改めて谷の広さを実感する。登りがいがあって燃えるわ。
途中、私とBunanomoriさんのみ沢筋を進む。この判断によって、後に私はカリカリの急傾斜をトラバースするはめに。手前でアイゼンに履き替えればよかったのだが、すでにスキーでトラバースを始めてしまい、ガチガチに凍ってストックも突き刺さらないのでここで履き替えるのは不可能。戻るのも無理。後ろのBunanomoriさんは手前でアイゼンに履き替えたが、私はこのままスキーのエッジを立てつつ、慎重にトラバースすることにした。雪の状態を見てジグを切る。こけたらシャーっと下まで滑っていきそうで、嫌な気分。ここを登るのが、一番緊張した…。
1800m辺りまで来るとなだらかになり、ここで再度休憩。時間はちょうど12:00。青空が見えだし、厚く覆いかぶさっていた雲が動き出していた。休憩後もスキーで登り、2050m辺りに来たところでジャッジタイム。「山頂行く?」と安爺。「当たり前!絶対行く!」と久保ちゃんと私。スキーと荷物をデポしアイゼンに履き替えたところで、先週岩木山で出会った方に偶然再会。全員で、山頂を目指すことにした。山スキーの世界って狭い。
空身で山頂に行く判断は大正解。まだ200mほどあったが、サクサク登れるうえ、ちょうど山頂についたところで快晴に。14:00、天気予報大当たり。 360度の眺望に感無量。ロングコースを登った達成感もあいまって、とにかく気持ちがいい。登頂できてよかった。
デポ地まで戻り、もう少し雪が緩むのをまとうと、各々担ぎ上げたビールを飲みながら、また長めの休憩をはじめたところで、kちゃんのザックからチーズケーキが登場し、サプライズ! 少し早いが、KIさんの還暦をみんなで祝う。おめでとうございます!
15:00になったので滑走開始。カリカリバーンは、一時間前に出た日差しですこし緩んだ気がする。波打ったカリカリはあるものの、広いバーンをみんな気持ちよく滑る。日本海に向かって、鳥海山を背負いながら。
とにかくここはロケーションが最高。谷が広い!壁が大きい! 緩むのをまったおかげで、滑っているのは我々だけ。まさにプライベートバーン。なんて贅沢。1時間ほど、千蛇谷のバーンを堪能し、夕日に染まる鳥海山を惜しみながら、また異形化したブナの森へと戻ってきた。夕日が差し込み、薄赤く、コントラストが増したブナの森はこれまた綺麗。あがりこ大王に「ただいま!」を伝え、無事中島台に全員到着。行動時間は約12時間。鳥海山、期待以上! 楽しかった~。来季はパウダー狙いで。みなさん、ありがとうございました!
≪おまけ≫
翌日の月山は、快晴だったが強風のため登頂せず。そのぶん、ザラメの広いバーンを存分に楽しみました。
≪コースタイム≫
5:30中島台―6:30あがりこ大王―13:00デポ地2050mあたり- 13:50鳥海山山頂―14:25サプライズ還暦祝い(デポ地)― 15:00 滑走開始― 17:30 中島台