戸隠本院岳ダイレクト尾根

2021年2月20日~22日 (山波440号) MM、HG(記)

◆2/20(sat)、駐車スペースに山梨ナンバー、金沢ナンバーの先行Pあり。後で分かったが、山梨Pは前日金曜日の入山、金沢Pと話したところ彼らはP1尾根とのこと。直後に3人組の京都Pの車も到着。ダイレクト尾根とのこと。

水、木曜日で大雪が降ったが、金曜の晴天で10cm程度は沈降し、山梨Pが付けたトレースがあるのでワカンも不要で難なく進める。大きな吊り橋を渡って直ぐに左岸から入る小沢(出合に小堰堤あり)から左岸台地に上がり更に一段上の台地へ。二俣が近くなってから上楠川沢床に降りると渡渉1回のみで二俣に着いた。

4年前は本谷沿いに行ったので渡渉が多く、多雪のラッセルでここまで3時間強掛かったのが懐かしい。

古いトレースはP1尾根方向に続いているが、直近のトレースはなんとダイレクト尾根へと続いている。

こういう雪稜のルートはトレースがあっては楽しめないので、P5尾根に転進しようかと思ったが、M口さんと協議し折角晴れが続くのでより長いダイレクト尾根に予定通り行こうとなる。

参道ルンゼはノーザイルで上がり、正面に小フェースを持つP2はザイルを出して1ピッチで抜ける。ランナーは途中の細い灌木で1本のみ取れるが、スタンス豊富なので問題ない。(Ⅲ+)上部で草付きに移る部分がちょっと緊張する。後続の京都Pは右から雪を拾って巻いたようだ。

P3, P4はいつの間にか越えており、P5も左から難なく越える。P6は傾斜の強い草付きルンゼをやや右上し、右のキノコ雪を乗越すこともできそうだが、時間がかかりそうなので、凹角を選択した。上部で左トラバースして草付き凹角に取り付く部分がやや悪い。

後続はP6上の幕営適地(雪庇下)で幕とのこと。我々は朝寝坊するであろうことを見越して、ヘッデンギリギリまで登ることに。

P7も結構傾斜が強い。正面から左にトラバースし草付きの浅い凹角をやや右上しP7上へ。日没30分前なので、ここで幕とする。

周囲はかなり切れ落ちているが、広めに整地したので、割と快適なテンバであった。この頃から予報通り雪が降る、SCWでは夜中に止むとのこと。

◆2/21(sun)、1時間程寝坊し0730頃BP発。朝から快晴で絶景。明るくなると結構切れ落ちたところにツエルトを張っていたことがわかる。

木を繋いでクライムダウンもできそうだが、テンバの直ぐ横の木で懸垂し、P7P8コルへ。P8(ジャンダルム)が登山大系では核心ピッチとされているが、確かに傾斜は強く一見すると弱点も無さそう。山梨のトレースは正面壁右へ続いているがキノコを何個か超えており、その上も直登できるか不明。

正面壁左際の草付きルンゼがなんとか登れそうだが、そこにトラバースするのがかなり際どい感じだ。左下を見やると枝の間から雪壁~ルンゼ~コルにルートが見出せた。

45m懸垂し、小リッジを巻いて雪壁基部へ。さらに左に回り込めそうなので偵察。回り込んだ先はどん詰まりで右手にあるルンゼも4段くらいのハングになっており無理、なので先程の雪壁基部までもどりこれを登る。傾斜は上部に行くほど強いが、細い灌木やスノーバーで支点を取って登る。一部CSなのか足場がないので、イボイノを打ってA0。55mくらい。

小コルから上は左の浅い草付き凹角に入り直上するとP8上に出た。後続の京都Pは正面壁右の山梨ラインから抜けてもう先に行っている模様。

P8/プラトーのコルへは懸垂10m。コルからは草付きの登り返し。コンテで行くつもりだったが、意外と傾斜が強いのでビレイに切り替えてスタカットとする。45m。プラトーでは京都Pがベースを張っていた。本日中に空荷で山頂ピストンにトライするとのこと。ここからはドーム状の巨大なP9前衛峰とP9が迫りかなりの迫力だ。

予報通り既に快晴・高温なので、雪が腐っている。正面の腐ったキノコと小垂壁が続くラインはそうとう厳しそうなので、定石通りトラバースして大きく巻くことに。登山大系ではトラバースして最初の支稜に絡んで登とあるので、枝稜の直ぐ手前のルンゼをコンテ70mくらい直上し、前衛峰の幕岩を超えたとことなる。

P9の幕岩は左ルンゼか支稜のキノコラインが登れそう。ルンゼは取りつきにでかいシュルントがあるんで厳しそうでパス。京都Pはトラバースしきる前の傾斜の強いラインに取り付いてどん詰まっている模様。

我々はキノコラインを直上。なんと山梨のトレースがあったが、キノコ部分のスタンスが崩れるので結構しんどい。こういうのは後続Pの方が苦労するパートだ。45m程度伸ばしたところの灌木で切る。リッジ状を拾い左の雪面に出て尾根に復帰コンテで100m くらい。

復帰したポイントがP9本峰の本院岳側(上の)肩だった。

肩からはピナクルが見える範囲で3つほど続き、時間がかかりそう。そろそろいい時間なので復帰点から下ってすぐの狭いコルを整地して自立式ツエルトを張る。右手のハング下が風が弱くて快適そうだが、引っかかっている雪の下がえぐれていて気持ち悪いのでここはトイレ場とし、やはりコルに張ることとした。

ツエルトは100 x 200 cm程度の底面サイズで小さい為、整地がラクだ。何とかザイル確保無しで寝れる広さは確保できた。

◆2/22(mon)、45分程寝坊し出発。今日も快晴。周辺を偵察し、BP地直ぐ下のルンゼの傾斜が比較的緩く西岳本谷に降りられそうと見当をつけてる。幕営装備をここにデポしてもここに戻るのが大変そうなので、全装担いて出発。

花粉症との合併症状なのか酒はあまり飲んでいないのに、朝から頭痛がするので、朝イチピッチはM口さんにお任せする。ピナクルは正面のキノコから越えていった。

幸い裏は懸垂なしでコルに降りられた。コルから下を除くがやはり見当どおり下降できそうなので一安心。

コンテで次のピナクルの凹角部~リッジをのぼる。一か所キノコがえぐれて大変なので、ピナクル上で切ってフォローはガイドビレーする。

雪は早くもグサグサだが、快晴なので絶景を堪能しながらの登攀に爽快感極まる。ピナクル上からは緩い雪稜を一登りで火打山、日本海が目に飛び込み山頂に至ったと知る。

周囲は360度の展望。高妻、八方睨、西岳、P1-P5峰に囲まれ遠くに火打、後立の稜線。一目で分かる鹿島槍・五竜は今年は多くの雪を抱えているようだ。

最終ピナクルから懸垂40mで検討を付けたコルにもどり、1ピッチ 35mビレーし、白樺から懸垂45m。後はひたすらクライムダウンし、心配されたシュルンドも迂回できて西岳本谷に降り立った。

途中上部の小キノコから何個か落ちてきて雪塊をかわす。側壁が立っており上部のキノコはそれほど大きくないので、下降路としては適当だった。

西岳本谷の奥壁北面には60m位ありそうな巨大な氷柱が繋がっておりそそる。

この3日の高温の影響か本谷には大きなデブリが散見されるので、極力トラバース気味に本谷を下降。

途中左を見上げるとプラトーからおちる雪面。ザイルなしで下降できそうな緩さだが末端で底雪崩クラスのデブリがあった。

P1尾根側面や奥壁から時折雪崩れており、急いで下降する。

沢床の巨岩が目立ち釜もでてくるようになったので、土日でP1尾根に上った金沢Pのトレースをあてにして、P1尾根急登部取りつきを目指して70m位登りかえす。

残念ながらトレースはワカンで、しかも高温で腐っているので、結構ズボるので高速道路とまではいかなかった。途中天狗平から振り返るとP7峰から本院岳まで見渡たせ。M口さんと戸隠に通い始めて5年を経てようやく登れたと感慨にふける。

ただ本院岳の岩壁や周囲の景色はは入山と比べて大分黒くなっているようで、翌月中ごろに予定している九頭竜山登山の計画が危ぶまれた。

二俣手前で沢を渡渉するが、コーヒー色の大増水だ。二俣で京都Pが追い付いてきた。彼らはデポ品がないので往路と同ルート先行されてツボ足トレースを付けられてしまったが、我々はワカン、ストックを装備し、その脇を歩く。こういう雪だとワカンはあまり沈まないもので快適に公民館まで下ってこれた。

タイトルとURLをコピーしました